いったん手を離したが最後、どこへ行ってしまうものやら見当もつかない。そんな行先定めぬ行動をよく「糸の切れたたこみたい」と表現する。子どものころ遊びに行くと暗くなるまで戻らず、「全くお前は家を出て行ったら出て行ったきりで糸の切れたたこみたいだ」と親に叱られた人もいるのでないか
▼たまに台風にもそんな厄介なものがある。本道に大きな被害をもたらした2016年の台風10号がそうだった。日本から遠い北太平洋で発生した10号は西進して房総半島に接近し、列島に沿って沖縄まで到達。ところがそこからほぼ180度進路を変えて北上し、大型で強い勢力を保ったまま本道をかすめたのだ
▼沖縄の南海上を今うろついている猛烈な台風11号も、同じ「糸の切れたたこみたいな」迷走タイプらしい。のろのろと西進した後、2日ころから急に北へ進路を変えるとみられている。動きが非常にゆっくりなため、沖縄本島や南大東島周辺はしばらく暴風と大雨に見舞われる危険な状態が続く。「雨戸閉め全身耳の二百十日」山本香代子。きょうは台風など災害への警戒を呼び掛ける二百十日。二百二十日とともに農家では昔から厄日とされてきた。その真っただ中を通過する11号である。もし列島縦断の進路をとるようなら、相当な被害が予想される
▼16年は8月17日からの1週間で本道に3つの台風が上陸。29日に接近した10号が追い打ちを掛けた。集中豪雨で十勝川や石狩川水系の河川が数多く氾濫し、甚大な被害を出している。今回も「糸の切れたたこ」の動きには十分注意したい。