ヘルメットをかぶった猫がどう見ても危ない行為をしようとしているのに「ヨシ!」と宣言する。そんな間の抜けた、しかし愛らしい〈現場猫〉をご存じだろう。中央労働災害防止協会の安全啓発ポスターにも登場していた
▼イラストレーターくまみねさんの〈仕事猫〉から派生したキャラクターである。多くの人が文言を考えているが、一見ふざけているようで、実はヒューマンエラーを鋭く突いているのが特徴だ。その中にこんな作品があった。並んで作業確認をしている3匹の現場猫の思いが語られていく。1匹目「後の2匹がしっかり見てくれるからヨシ!」、2匹目「1匹目が見たはずだし3匹目も見るからヨシ!」、3匹目「前の2匹が確認を終えてるからヨシ!」。何が問題かは言うまでもない
▼静岡県牧之原市の認定こども園「川崎幼稚園」で3歳の女児が通園バスに取り残され、熱中症で死亡した事故もそんなヒューマンエラーが幾つも重なった結果だった。園の確認態勢が、ずさん極まりない。言い訳にもならないが、当日はいつもの運転手に代わり園長が運転していた。ところが園長も添乗者も乗った数と降りた数の違いに気づかず確認もしない。クラス担任も女児の不在を知りながらやはり確認を怠っていた
▼「誰かがやっているだろう」「自分が確認しなくても大丈夫」という人任せの排除は、建設など産業の現場では最初にたたき込まれる安全の基本である。自分の目で見、正しい手順でもれなく確認して初めて「ヨシ!」だ。幼児教育の現場にも産業安全の知識が広まってほしい。