特殊詐欺激増

2022年09月14日 09時00分

 小説家の井上荒野さんがエッセーで、自分が「穴に落ちるように」韓流ドラマ『愛の不時着』にはまってしまったわけを考察していた。タイトルがそのまま答えになっているのだが、「物語爆弾のしわざ」だというのである

 ▼自らの経験に加え、小説や漫画、ドラマや映画など心を強く動かされるものに出会ったとき、その人の中に物語爆弾が生まれるらしい。次に他の場面で同じ展開を感じたとき、爆弾が破裂する。『愛の不時着』のように感動を量産するドラマは「きっとこうなる!」と思って見ていると実際その通りになり、「ほらやっぱり!」と高揚感が得られるそうだ。爆弾を持っているのだから刺激があれば破裂するのは当たり前。ドラマ制作者もよく分かっている

 ▼心は複雑なようで案外たわいない。特殊詐欺もそんな物語爆弾を悪用しているようだ。〈子どもに何かあったらどうしよう〉〈医療費が高すぎる気がする〉。主に高齢者が無意識に抱える悲観的な物語を巧みに刺激し、破裂させるのだ。子を名乗る者が焦って助けを求めてきたら、日頃の不安が本当になったと思っても無理はない。医療費を還付すると連絡がくれば「ほらやっぱり!」の感情も湧こう

 ▼道警によると本道の被害はことし8月末で203件、総額7億8718万円。前年に比べ約4倍の額という。コロナ禍で人間関係が希薄になったのも影響しているらしい。井上さんは爆発を避けるのに「べつの視点からその物語を読んでみる」大切さを説く。本人だけでは難しかろう。別の視点を持つ善意の第3者が力になりたい。


ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

e-kensinプラス入会のご案内
  • 古垣建設
  • web企画
  • 東宏

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

おとなの養生訓 第245回 「乳糖不耐症」 原因を...
2023年01月11日 (1,418)
函館―青森間、車で2時間半 津軽海峡トンネル構想
2021年01月13日 (1,298)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (1,256)
アルファコート、北見駅前にホテル新築 「JRイン」...
2024年04月16日 (1,115)
藻岩高敷地に新設校 27年春開校へ
2022年02月21日 (901)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第258回「体温上昇と発熱」。病気による発熱と熱中症のうつ熱の見分けは困難。医師の判断を仰ぎましょう。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第34回「1日2470個のご飯粒」。食品ロスについて考えてみましょう。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第32回「読解力と認知特性」。特性に合った方法で伝えれば、コミュニケーション環境が飛躍的に向上するかもしれません。