5年ぶりのJアラート

2022年10月05日 09時00分

 納得のいく理由があれば、人はどこまでも無防備になれてしまう。宮沢賢治の童話『注文の多い料理店』は、そんな人の心の愚かさや単純さを教えてくれる

 ▼腹を減らした猟師が深い山の中で一軒の料理店を見つけ、喜んで飛び込む話だった。料理店は「服を脱げ」「泥を落とせ」「鉄砲を置け」と、客の猟師に次々と注文を出す。清潔な状態で落ち着いて食べるには当然と思い、猟師はいちいち素直に従うのである。実は自分が食べられる側なのも知らずに。気づいたときにはもう、恐ろしい山猫が舌なめずりをして扉の向こうで待ち構えていた。日本も猟師を笑えないのでないか。戦後、「防衛費を削れ」「日米安保条約は破棄せよ」「憲法9条に触れるな」、そんな注文が世の中に出続けた

 ▼平和のため、戦争を起こさないためとの触れ込みだった。多くの人がその空気に慣れ、結果、日本の防衛力は最低限度のところにとどまらざるをえなかった。ならず者が扉の向こうで着々と牙を研いでいたのにである。きのうの朝、緊迫する世界情勢から遊離した平和の夢に溺れる日本にJアラートが鳴り響いた。5年ぶりの警報に肝が縮んだ人もいよう。北朝鮮が本道・青森上空を通過する中距離弾道ミサイルを発射し、西太平洋に着弾させたのである

 ▼政府は厳重に抗議し、最も強い表現で非難したという。ただ、実際に本土を狙われた場合、防げるかどうかは心もとない。それが現実だ。3日に臨時国会が始まったが、国葬儀や旧統一教会が論戦の中心になるのだろう。扉の向こうにある危機を軽視したまま。


ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

e-kensinプラス入会のご案内
  • 東宏
  • web企画
  • 北海道水替事業協同組合

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

おとなの養生訓 第245回 「乳糖不耐症」 原因を...
2023年01月11日 (1,409)
函館―青森間、車で2時間半 津軽海峡トンネル構想
2021年01月13日 (1,283)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (1,244)
アルファコート、北見駅前にホテル新築 「JRイン」...
2024年04月16日 (1,113)
藻岩高敷地に新設校 27年春開校へ
2022年02月21日 (894)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第258回「体温上昇と発熱」。病気による発熱と熱中症のうつ熱の見分けは困難。医師の判断を仰ぎましょう。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第34回「1日2470個のご飯粒」。食品ロスについて考えてみましょう。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第32回「読解力と認知特性」。特性に合った方法で伝えれば、コミュニケーション環境が飛躍的に向上するかもしれません。