気に入らないものは目の前から消してしまいたい。人は時にそんな暗い思いにとらわれることがある。ロックミュージシャンの矢沢永吉さんも経験があっただろう。『黒く塗りつぶせ』(西岡恭蔵作詞、矢沢永吉作曲)で、そんな感情をこう表現していた
▼「いつも働きぱなし まるで犬ころみたいさ Night&Day なのにもんなし Night&Day シャクな金持ちどもを みんな 黒く塗りつぶせ」。とはいえいくら熱い「ヤザワ」だって、本当に金持ちの人々に黒いペンキをぶっかけたりはしない。気持ちをぶつけ、自分や社会を変える力にするのが歌の役割だろう。実際に行動に移してしまえば、もはや反社会的行為か犯罪である
▼ただ、昨今の環境活動家はそれを常とう手段にしているようだ。14日、英国ロンドンのナショナルギャラリーで、女性環境活動家2人がゴッホの代表作「ひまわり」にトマトスープを投げつける事件があったという。絵は半分ほどがオレンジ色に塗りつぶされた。報道によると2人は犯行後、「絵と生命どちらが大切か」などと叫んでいたという。訳が分からない。同じ団体に属する男がこの2日後、やはりロンドンの高級車販売店にオレンジ色の塗料を吹きかけている
▼5月にはパリのルーブル美術館で、地球の破壊に抗議する男が名画「モナリザ」にケーキをぶつける事件もあった。こういった活動は「エコテロリズム」と呼ばれ、共感より反感を招いているそうだ。当然だろう。一部の愚か者のせいで環境活動家全ての評価が黒く塗りつぶされかねない。