さほど遠い未来でない2040年に、全国の市町村数の約半分に当たる896市町村が消滅してしまうかもしれない。日本創成会議(座長・増田寛也日本郵政社長)がそんな衝撃的なレポートを発表したのは8年前のことだった。要因は少子化の進行と若者の東京圏への移住である
▼消滅という言葉は少々行き過ぎの感があるものの、自治機能を十分果たせないほど衰退に近付いた自治体が増えているのは事実だろう。少子高齢化の問題というと生産年齢人口(15―64歳)の地盤沈下も相当深刻である。1995年の8700万人をピークに減少へ転じ、2020年には7400万人に低下、40年には6000万人を下回ると予想されている。減少に転じた時期は、景気低迷の「失われた20年」の初期ともほぼ重なる
▼人口構成の変化が日本経済に与える負の影響。それがいよいよ誰の目にも明らかになってきたわけだ。一向に下げ止まる気配のない最近の異常な円安も、日本が抱える人口問題と無縁ではあるまい。生産性が改善されないまま生産年齢人口だけ減少すれば、モノやアイデアを生み出す力が弱まるのは当たり前。円安の直接の原因は利上げを進める米国とゼロ金利を維持する日本との金利差拡大だが、そもそも日本に強い競争力があればこんな事態にはならなかったのである
▼ここ10年は「アベノミクス」で何とかしのいできた。ただそれも限界。政府は片手間にしてきた少子化、若者対策に本腰を入れた方がいい。働く人も地方も衰退に向かわせない強力な政策が長い目で見て為替を安定させる。