子どものころ、けんかをして親や先生から「けんか両成敗」だと問答無用で叱られることにいつも疑問を感じていた。相手が仕掛けてきたためやむを得ず応戦しただけ。「自分は悪くない」というわけである
▼理不尽といえば確かにその通り。今ではほとんど使われない仲裁方法かもしれない。とはいえ、大人になって理解できたこともある。結局のところ、子どものけんかなどはどちらが悪いかよく分からないのだ。その時だけでなく、普段のそれぞれの言動がけんかを招いている場合も多い。仕掛けた方にもそれなりの言い分はあり、受けた方にも自分が正しいとの確信がある。理想的とはいえないが、もめ事を収めるには痛み分けも一つの有効な解決策なのだろう
▼日本音楽著作権協会(JASRAC)と音楽教室のけんかもどうやら痛み分けで決着したらしい。JASRACが音楽教室でのレッスン演奏に著作権使用料を徴収すると表明したのに対し、音楽教室が無効の確認を求めて争っていた裁判である。最高裁第1小法廷は24日、徴収権を全面的に認めた地裁判決の中身を整理し、生徒の演奏に対しては徴収できないとの判断を下した。ただし教師の演奏に対する徴収は可能としたそうだ
▼がめついと批判されながらも著作権を錦の御旗にけんかを売ったJASRACにも一面の理はあるし、自由で豊かな音楽教育を守ろうと立ち上がった音楽教室にも自らの正義がある。どちらにも理不尽との思いはあろうが、もとより敵ではない。両者とも一度頭を冷やし、互いの発展を考えてみてはどうだろう。