女性アイドルグループ「モーニング娘。」などの総合プロデュースを手掛ける音楽家の「つんく♂」さんは、これまで数々の流行を生み出してきた。世の中に新しい価値を提供することに意義を見いだしてきた人なのだろう
▼自らがボーカルを務めたバンド「シャ乱Q」のヒット曲『シングルベッド』(つんく♂作詞、はたけ作曲)の歌い出しもこんな調子だった。「流行の唄も歌えなくて ダサイはずのこの俺―」。流行への強いこだわりを感じる。28年前の曲だが、多くの人が一つの流行に乗る当時の雰囲気をよく表しているのでないか。今はそのころとだいぶ違う。ユーキャン〈新語・流行語大賞〉を見てあらためて気づかされた
▼先日発表されたことしのノミネート30語を眺めると、聞いたこともない言葉が多いのである。例えば「インティマシー・コーディネーター」「OBN」「ヌン活」「リスキリング」。一体どこで話題になった何なのか。知らない新語・流行語は年を追うごとに増えていくようだ。趣味や関心が多様化し、大きな流行が起きにくくなっているのかもしれない。人々の意識がコロナと物価高に集中していることも影響していよう。昨今の国民はつんく♂さんがうまく笛を吹いても、一斉に踊ったりはしないのだ
▼それでも道民としては、北海道日本ハムファイターズ関連で「きつねダンス」と「BIGBOSS」が選ばれたのは素直に喜びたい。前回は本道に関係する新語・流行語が一つもなかった。それはそれで寂しい。たまにはみんなそろって踊るのも楽しいものなのである。