江戸時代の中期以降、全国で百姓一揆の発生する数が増えた。飢饉や自然災害が相次いだためである。財政が悪化した藩の中には、困窮する農民の事情に一切構わず、年貢をさらに重くして乗り切ろうとするところがあった
▼財政規模を維持することが目的化し、農民を数字合わせの道具としか見ていなかったわけだ。農民としては暮らしも命もかかっている。怒り、抗議に立ち上がるのも当然の成り行きだったろう。民の状況を顧みず年貢を取り立てる藩と今の政府が重なって見える。このところ増税を求める議論がかまびすしい。先日、政府の税制調査会が消費税率引き上げ必須論の花火を打ち上げた。自動車の走行距離に応じて課税する走行距離税を導入するようにとの意見も出たそうだ
▼これに呼応するように自民党の税制調査会も、各種財源確保のため所得税や法人税を引き上げる方向で検討に入ることを表明。公明党からも同調の声が出た。岸田首相もかねてから金融所得課税の強化を打ち出している。コロナ禍で疲れ切り、賃金の上昇もないまま急激な物価高にさらされている国民に突きつけられた数々の増税話。かつての農民同様、多くの国民にとっては乾いた手ぬぐいをさらに絞られる気分だろう
▼消費税率引き上げの際には所得税減税などを同時に検討し、直間比率の見直しも進めるものだがそんな気配もない。昨年度の国民負担率は実に48%に上っていたのにである。かくなる上は一揆に出るしかないか。いや、もう始まっていよう。世論調査での岸田政権に対する支持率の低さがそれだ。