兵法を説く中国の古典『孫子』は今も、スポーツやビジネスの現場などでよく使われる。圧倒的な実力を備え敵に勝負する気を起こさせない「戦わずして勝つ」はその代表例だろう
▼あまり知られていないが「間に五あり」の教えもある。間とはスパイのことだ。一般住民を使う郷間、役人を利用する内間、敵のスパイを逆用する反間、死を覚悟して活動する死間、本国に情報を持ち帰る生間の5種類があるのだとか。本家の中国が国際舞台でこの兵法を運用していないわけはあるまい。ニュースを聞いても特に意外とは感じなかった人がほとんどでないか。ただ、不快感は募る。中国の警察当局が日本に拠点を置いている可能性が明らかになったのである
▼自民党外交部会などの合同会議で19日、外務省が説明した。人権監視活動に取り組むスペインのNGOが公表した報告書に基づくもので、それによると世界中にかなりの数の海外拠点が設置されているそうだ。どうやらそのうちの2カ所が日本にあるらしい。住所は分からないものの、拠点は東京と他にもう1カ所。組織体制や規模もベールに包まれていて判然としない。日本にいる中国人の言動を監視し、時に圧力をかけるのが主な任務とみられている。中国警察が日本国内で公権力を行使しているとすれば、わが国の主権を侵害しているのは間違いない
▼それだけならまだしも、隠れて活動している以上、郷間や内間の工作をしていないとも限らない。別の意味で中国の「戦わずして勝つ」の策にはまらないよう、政府には毅然と対応してもらいたい。