修繕優先度が低い橋 調査に消極的傾向
道北・空知地方の市町村では、有害な低濃度ポリ塩化ビフェニール(PCB)塗膜を含む橋梁の除去が進められている。橋梁長寿命化に伴う修繕と一体的に除却をする自治体が多いが、除去を目的とする単独の調査には消極的な傾向が見られる。国が義務付ける2026年度末の完全除去に向けて支援体制の拡充が必要とされる。
橋梁に含まれる可能性があるPCBは耐水性や耐熱性、絶縁性に優れていて、樹脂を柔らかくする可塑剤としての性質もあるため橋梁など土木構造物の塗装にも用いられてきた。しかし、人体への有毒性から1972年に生産中止となった。国はPCB特措法により管理者には27年3月31日までの処理を義務付けている。
環境省のポリ塩化ビフェニル廃棄物処理推進室の担当者は、「低濃度とは言え、有毒物なので順次処理してほしい」と呼び掛ける。多くの自治体では橋梁修繕の際に鋼構造物に塗られた塗膜を除去するといった対策を取っている。
空知管内24市町への調査では、5市10町が調査中または今後処分予定との回答だった。岩見沢市は22年度までに2橋の処分を終え、残るPCB含有橋は6橋。27年3月までに順次対応し、全ての処分を終える見込みとしている。一方で、加藤秀貴土木課長は「処分費用が高いのが課題だ」と指摘。具体的な処分計画のめどは立っていないという。
上川管内21市町村への調査では、鷹栖町など4町村のみが対応完了と回答。留萌管内では8市町村のうち増毛町、宗谷管内の8市町村では豊富町のみが完了とした。
上川管内では鷹栖町が全道的にも早くPCB含有塗膜が見つかり15年度から2年間かけて処理。対象年度に全橋を調査した結果、3橋でPCBが含まれていることが判明し、全て除去は完了している。しかし、道内に低濃度PCB廃棄物処理施設がないため、2橋については廃棄物を道外の処理施設に運搬する必要も生じたという。
道北・空知地方全体では、橋梁長寿命化計画に基づく橋梁修繕や架け換えに合わせて含有調査または塗膜除去を進めていると回答した市町村が多数を占める。ただほとんどがPCB除去に限った単独の調査ができていないのが現状だ。
135橋を管理する新十津川町の担当者は「管理橋が多く、全ての橋梁を調査・処分するのは補助金がないと厳しい」と支援の必要性を訴える。ある自治体の担当者は「補修の必要がない橋梁は補助金が出ないため、調べたくないのが本音」と話す。
地方自治体の限られた予算では、効率的にPCB含有塗料の除去を進めるのには限界がある。26年度末の完全除却には、調査費の補助や処理費用の負担など、財政面での支援が求められる。