オホーツク地方を中心とする大規模停電がようやく復旧した。先週後半の暴風雪で、送電用の鉄塔が倒壊したのが直接の原因という。一時は紋別市のほぼ全域1万3400戸余りを含め、道内2万戸近くで停電が発生したそうだ。真冬に電気を奪われた住民は、どれだけ不安だったことか
▼真冬の停電は寒冷地の住民にとって生死を左右する深刻な問題である。大げさな話ではない。特に道民は身につまされていよう。今回の原因は送電網の物理的破損だったが、停電の話題となるとどうしても気になるのは発電所のことである。たとえ送電網が健全でも電源が頼りなければ安心はできない。やっとその原点に戻ってきたわけだ
▼政府が東日本大震災直後の福島第1原子力発電所事故以来続けてきた原発抑制方針を大きく転換した。先日開いた岸田首相を議長とするGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議で、脱炭素社会の実現とエネルギー安定供給のため、原発を最大限活用することにしたのである。具体的には上限とされてきた60年を越える運転期間を可能にする措置に加え、次世代型原子炉を想定した建て替えにも踏み出す。原発を止め年間数兆円単位で化石燃料輸入を増やし、国民に重荷を負わせる自虐行為からこれで抜け出せる
▼電源のベストミックスを無視した太陽光発電の拡大で火力が割を食う現実も既に見過ごせなくなっていた。何より災害大国日本で暮らしていくには安定供給できる電源が不可欠。感情的な安心に目を奪われ、無理な電源構成を夢見ることほど危険な事態はない。