大手ハンバーガーチェーンなどファストフード店の接客の仕方が不快だと、話題になることが以前はよくあった。客が慣れたのか店が改善したのか、昨今はあまり聞かれなくなったようだ
▼不快の原因は徹底したマニュアル化にあった。応対方法が細かく決められているため、動きも言葉も機械的になりがちで温かみがない。さらに流れを無視して「ポテトはいかがですか」「ドリンクはいかがですか」と勧めてくる。客の様子や反応にはお構いなし。言われたことをロボットのように実行するだけなのだから始末が悪い。とはいえマニュアルさえあれば、アルバイトのような未経験者でもすぐに店頭で仕事ができる。優れたシステムではあるのだろう
▼そんなマニュアル化が凶悪な犯罪にまで広がっている可能性が出てきた。最近、関東を中心に各地で相次ぐ強盗事件である。黒幕の指示役がSNSで「闇バイト」を募り、金品を強奪する手口を細かく教えた上で実行させる構図が浮かび上がってきているという。事件は1都7県で十数件発生。3人程度で人のいる住宅に押し入り、金品のある場所を聞き出して奪うのが決まったやり方だ。目的のためには暴力をいとわないところも共通している。狛江市の事件では住人の女性が殺害された
▼警視庁などは既に十数人の容疑者を逮捕。スマホの履歴から強盗団のつながりが分かったという。どうやら裏に素人でも実行できる強盗のマニュアルを用意し、操っている人物がいるらしい。マニュアルで罪悪感は薄まっても、犯した罪が軽くなるわけではないのだが。