昭和のテレビ歌番組には司会者の名調子というものがあった。曲を紹介するとき、歌手や歌詞に寄り添った言葉を付け、すんなりと曲につなげるのである。名司会者玉置宏さんのこの枕ことばを思い出す人も多いのでないか。「歌は世につれ世は歌につれ」
▼確かに歌とはそういうものだった。こちらも同じだろう。第一生命の「サラっと一句!わたしの川柳」(サラリーマン川柳から改名)優秀100句が決まった。名調子とはいかないものの、8万5437句から選ばれた作品を幾つか紹介したい。「また値上げ節約生活もう音上げ」健康奉仕。食品と燃料だけでも苦しいのにとうとう電気まで。「Z世代対応悩むゆとり世代」アラサー軍曹。それを新人類が遠くからなすすべなく眺めている
▼「祖母踊るきつねダンスが太極拳」カクト。エスコンフィールドでぜひ披露してほしい。「ふるさとは返礼品で変わる俺」こゆきのじいじ。ふるさとは遠きにありて思うものから、身近で味わうものに変わったらしい。今回も新型コロナを題材にした句は多かった。「オレオレとマスク外して顔認証」生存認証機。知り合いか赤の他人か、すれ違うときが悩ましい。わざとよそを見たりして。「歓迎会開かれぬままもう異動」3年と3日。中にはリモート続きでほぼ出社しないまま異動になる人も
▼社会の正常化で念願がかなった人もいるようだ。「動画から抜け出た孫をやっと抱く」中年やまめ。優秀100句全作品を見たい方は同社HPでどうぞ。3月19日まで、ベスト10を決める投票も受け付けているそうだ。