帯広で藤丸百貨店が閉店 新時代見据え再建挑戦

2023年02月03日 08時00分

 1月31日、帯広市内の藤丸百貨店が閉店した。シャッターが閉まる瞬間、市民からあふれるように感謝の言葉が飛ぶ。122年間、地域に根付いた存在感を裏付けた。半面、直近では7期連続赤字決算になるなど苦戦。市民の百貨店離れが要因だ。今後は村松ホールディングスの村松一樹社長と、そらの米田健史社長による新会社が再建を担う。村松社長は「必ず営業再開を実現させる」と意気込み、前人未到の挑戦に踏み出した。

 藤丸は1900年創業。道東唯一の百貨店として、帯広市の中心部に君臨し続けた。ピーク時には145億円を売り上げていたが、郊外複合施設との競争激化やインターネット通販の拡大が影響。百貨店離れの流れには逆らえなかった。

 閉店報道直後、瞬く間に動揺の波が広がった。帯広商工会議所の三井真専務理事は「単なる1施設の閉店ではない」とし、行政との連携に奔走。再就職のあっせんに動いた。説明会には延べ108社が参加。地域を挙げて救いの手を差し伸べたが、閉店直前の再就職率は3割程度にとどまった。

 今後の動きに注目が集まる。村松社長、米田社長による新会社は、藤丸の屋号を引き継ぐ。百貨店機能を縮小した施設を構想する。村松社長は「空洞化の時間を極力短くしたいが、拙速には進めたくない」と話す。経済界も両名のスピード感を評価。帯広商工会議所の川田章博会頭は「絶賛と批判は紙一重。慎重に検討してほしい」と話し、両氏の取り組みを見守る姿勢だ。

 同日閉店した東京・渋谷の東急百貨店本店は、現施設を解体し、マンションとホテルからなる複合施設を建設する。首都圏では一般的な流れで、藤丸の方針は全国的に見ても異例。再建が成功すれば十勝経済界にとって大きな実績になるが、乗り越えるべきハードルは高い。

 今までと同じことをしても無意味だ。デベロッパー間では「単に商業施設を造れば人が集まる時代ではない」という認識。現施設の活用が前提である以上、釧路まで商圏を広げる工夫や、入居テナントで違いを生み出すのが基本線となる。都内の大学教授に話を聞くと「帯広市のような地方都市は、その場所でしかできないことを盛り込むべき」と訴える。

 最終日のレシートには「また、藤丸で会いましょう」との文字が刻まれていた。122年の歴史はとても重い。しかし、新時代幕開けのバトンは、確かに受け継がれた。(草野健太郎)


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