東日本大震災で親を失った子どもたちの作文集『お空から、ちゃんと見ててね』(あしなが育英会編、朝日新聞出版)に、こんな一文があったのを思い出す
▼「おかあさんがいたら、いろんなことができたね。ケーキをつくったりできたよね。ほいくえんからかえると、おかあさんがつくってたべさせてくれたね。3月10日までは、いい日だったね」。年齢は記されていないが、ひらがな文と内容からするとまだ幼い。トルコ南部のシリア国境付近で6日発生した地震の死者数が日ごと増え続けている。どれだけの悲しみが生まれていることか。東日本を経験した日本人の多くは、人ごとと思えずにいよう。現地の方々の苦しみはいかばかりか
▼9日現在で死者数は既に1万5000人を超えている。ただ救助が追い付いていないため、あとどれくらいの人ががれきの下に埋まっているのかつかめていない状況という。現地では懸命の救助・捜索活動が行われているが、発生から72時間が過ぎ、焦燥感ばかりが募る。今回の地震の規模はマグニチュード7・8。耐震化が十分でない建物は倒壊する強さである。一瞬にして崩れる建物から逃げられなかった人が多いと聞く。厳しい寒さも事態をさらに難しくしている。氷点下の日も珍しくないそうだ
▼東日本のときも地震や津波からは何とか逃れたものの、避難中に寒さで体調を崩す被災者がたくさんいた。二次的被害の防止にも適切な措置が必要である。今は迅速な救助と生活支援を祈るばかり。悲しい記憶を抱え込まねばならない人が一人でも減りますように。