本道が果たす役割 道路網整備など急務
人口減少が全国に10年先駆けて進む本道。建設業の担い手不足の深刻さも相まって、働き方改革による業界の魅力向上がかねての課題だ。週休2日工事の拡大、2023年度からの公共工事へのBIM/CIM原則適用―。労働環境改善に向けた取り組みが進み、24年度には建設業への罰則付き時間外労働上限規制の適用が始まる。さらには資材価格の高騰、賃上げ総合評価といった新たな課題が立ちふさがる。頭打ちの予算規模のままでは、道内建設業者の道のりは極めて厳しい。
22年12月に閣議決定した23年度予算案のうち、公共事業関係費は前年度当初より約26億円増の6兆600億円にとどまった。北海道開発予算増額のためには、この少ないシェアを全国と競い合って獲得する必要があった。
今後も頭打ちの予算規模では、公共事業量の縮小は免れない。週休2日試行工事はこれからも拡大する方向にあり、受注者が適正な利潤を得るための工期確保などで、工事の積算額は上昇するとみられる。
また、時間外労働上限規制への対処として、工期延長が図られるケースも想定される。一定の予算規模のままでは工事量の低下が避けられないのは明白だ。これに、資材価格の高騰が追い打ちを掛ける。受注量が減れば、労働者の賃上げに必要な原資の確保が難しくなる。
北海道開発予算は、他の地方整備局が各地整間で予算の駆け引きに迫られているのと比べ、本道分の額面が着実に担保されるのが大きい利点だ。だからこそ、いかに日本の食料・エネルギー生産拠点としての役割を本道が果たせるかを、全国に発信する必要がある。
道路整備から見ると、全国ベースでは高規格道路ネットワークの整備が進み、新設・改良から維持管理にシフトする傾向が近年の予算配分からにじみ出る。だが、本道の高規格道路整備は道半ば。ミッシングリンクの解消や4車線化が求められる路線が数多く残る。これらの整備が、先に上げた食料・エネルギー安全保障に直結する。
治水、農業部門も同様だ。地域を守る治水ダムや河川改良整備、効率的な営農を実現する区画整理といった工事を加速化する必要がある。
これら工事の執行を滞りなく進めるのが、道内建設業者の大きな使命だ。本道の可能性を引き出すための工事量確保と、この執行能力の顕示の2つが欠かせない要素となる。
国土交通省の方針として、23年度からの公共工事へのBIM/CIM原則適用が示されている。北海道開発局の港湾部門では、いずれ全国基準に統一することを前提に独自ルールを設けた。CIM適用の効果が認められる案件を対象とするなど、道内業者が段階を踏んで臨めるようにした。「あくまで生産性向上が目的」という主眼で、受発注者ともにステップアップする。
週休2日試行工事、時間外労働上限規制については、これまで以上に受発注者間での工期などに関する協議が重要性を増す。本道の厳しい自然条件下では施工時期が限られるため、両者が綿密に連携・協力しなければならない。
発注者側は受注者からの質問への速やかな対応、受注者側はデジタル化などによる作業効率化の追求―などが一例に挙がる。こういった課題にいかに妥協なく取り組めるかが、死活問題になる。
北海道局は、次期北海道総合開発計画の作成作業を進めている。このほど中間整理案がまとめられ、2050年時の本道の未来像などがあらためて示された。食や観光の場となる生産空間(地方部)の維持・発展が描かれ、生産空間と都市部は、高規格道路ネットワークなどの「リアル」と「デジタル」のハイブリッドで結ばれている、といった青写真だ。
目下、地域を水害から守るために糠平ダムのかさ上げの可能性が浮上している。政府は北海道と東京を結ぶ海底直流送電線は30年度の供用開始を見込んでいて、洋上風力発電など再生可能エネルギー開発の機運は今後さらに高まるだろう。半導体製造のRapidus(ラピダス、東京)の進出による好影響にも期待が集まる。
見え始めた未来像。これらを現実に落とし込むプレーヤーとなるための準備が、道内建設業者に求められている。