未知の物質に侵され滅亡の危機にひんする地球を救うため、3人の精鋭が手掛かりを求めて深宇宙に旅立つ。日本でも話題になった米作家アンディ・ウィアーのSF小説『プロジェクト・ヘイル・メアリー』(早川書房)である
▼ところが冷凍睡眠から覚めると生きているのは一人だけ。それでも宇宙船での生活に不便はなかった。AI(人工知能)が食事から治療、健康管理、操船まで全てやってくれるからである。AIがそんな便利で信頼の置ける仲間になれるかどうか、意見は真っ二つに分かれているようだ。起業家のイーロン・マスク氏や歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏ら著名人千人以上が、最先端AIの開発を少なくとも半年間停止するよう求める米非営利団体の公開書簡に署名したそうだ。団体が先頃公表した
▼報道によると、理由は社会や人類の深刻なリスクとなりうること。開発者自身にさえ何が起こるか予測できない中で、新たな知性を野放図に進化させていいのかと訴えているのである。一方で実業家のビル・ゲイツ氏などは、AIがもたらす恩恵に重きを置く。どちらが正しいか、誰も答えを持っていない。実際「ドラえもん」ならいいが、人類を駆逐する「ターミネーター」になっては目も当てられない
▼「リクルート」の研究機関が先日、2040年には社会の担い手が1100万人不足すると予測していた。ただし大方の仕事はAIに置き換え可能との説もある。浸食されるようで少々気味が悪い。きょうから新年度。いつまでも人が主役の門出の日であってほしいものだが。