ことしも近所でほほ笑ましい光景を多く見掛ける時期になった。この春に小学校へ入学する子どもたちが学校までの道のりを、実際に歩いて確かめている姿である
▼真っすぐ前を向いて一人だけで歩いている子もいれば、友だちとおしゃべりをしながら楽しそうに行く子たちもいる。親に連れられて、とぼとぼという子は少し気後れをしているのか。自分の子どもたちが小さかったころのことを思い出しほろりとする。道内の入学式はほとんどがあさって6日。子どもたちも親も、期待と不安が最高潮に達していよう。学校によって対応は違うが、久々にマスクなしで学校生活が送れる新1年生である。文部科学省が先月、基本方針を各学校に通知した
▼五百竹雄貴君(小1・当時)の詩を思い出す。こんな一節があった。「なにもしなくても ともだちができるわけじゃないんだ じぶんで『ともだちになろう』っていうんだよ」(『ことばのしっぽ』中央公論新社)。互いの顔が見えたら気持ちも伝わりやすい。この春、新たなスタート台に立つのは子どもたちだけではない。政府の「こども家庭庁」もである。本年度予算に一般、特別会計合わせて4兆8104億円を盛り込み、岸田首相肝いりの「異次元の少子化対策」に取り組む
▼こちらもぜひマスクなしで、顔の見える施策を実行してもらいたい。先の詩になぞらえると「新たな役所をつくっても 仕事ができるわけじゃないんだ」というところだろう。自分から動いてこそ少子化に歯止めを掛けられる。新1年生の春の風物詩をなくしてはいけない。