先進7カ国(G7)の気候・エネルギー・環境相が札幌に集まり、今後の温暖化対策などについて話し合ったという。人類共通の課題に一丸となって取り組もうと協調ムードで始まったものの、議論が進むうちに各国の事情や思惑の違いが露わになってきたそうだ
▼中でも日本と欧米の温度差は時に著しく、熱湯風呂と水風呂くらいの差があったらしい。16日に出された共同声明が、ぬるま湯になったのもうなずける。例えばEV(電気自動車)に関してである。欧米が導入の数値目標を定めようと主張したのに対し、ガソリンも使うハイブリッド車に強みを持つ日本はこれに抵抗。結局、車種を限定せず自動車全体で、2035年に二酸化炭素(CO₂)排出量を50%削減するとの目標にふわりと着地した
▼石炭火力発電でも対立があったと聞く。欧州やカナダは廃止時期を明記するよう要求したが、高効率発電技術でCO₂排出を相当程度抑制している日本はこれにも反対。共同声明への盛り込みは見送られた。一方、洋上風力発電を30年までに21年度実績比7倍とする方針には異論が出なかったようだ。7カ国合計でというのがみそである。いずれかの国が頑張れば目標は達成できるわけだ
▼こう見ると大臣たちはなかなかの商売上手。欧米がEVで自動車市場の制覇を狙い、日本は防戦を強いられた。風力設備の製造も欧米が中心である。石炭火力を封じれば風力の買い手は増えよう。脱炭素の理念にうそはないのだろうが、先進国は損になることをしない。声明はぬるま湯くらいでちょうどいいのかも。