外国人にもそのままの形で通用する日本語に、「Mottainai(もったいない)」や「Karaoke(カラオケ)」がある。近頃はこれらに加えて「Kawaii(かわいい)」も、かなり市民権を得てきているらしい
▼日本人の感覚とはずれる部分もないではないが、外国人は日本独自の風俗や文化に触れ、感嘆したときによく使うようだ。主にアニメやキャラクターが対象だが、活用の範囲はかなり広い。それを逆輸入した形か、意外な分野にも使われていて驚いた。一般には真逆な印象の土木である。土木ライターの三上美絵さんが最近、『かわいい土木見つけ旅 重厚長大だけじゃない、健気で愛おしいドボクの魅力探訪』(技術評論社)を発刊。タイトルにひかれて筆者もつい衝動買いしてしまった
▼三上さんが全国を旅して出会った「小さくて、人びとに愛され、大切にされている土木構造物」を多数紹介している。豊富な写真とともに機能や歴史などが独自の視点で語られていて実に楽しい。例えばカップケーキ風の外観を持つ「水戸市水道低区配水塔」や亀の甲羅のようなトラス構造が美しい名古屋市「向野橋」、水争いを丸く収めた川崎市「久地円筒分水」など。本道の物件では釧路町「岩保木水門」が取り上げられていた
▼三上さんはこれぞという土木を見つけると、思わず「ドボかわいい!」と叫びそうになるという。その域に達するのは少々難しいが、気持ちは分かる。土木好きは案外多い。今週末から春の大型連休だ。あなたの「ドボかわいい」を探してみるのも一興である。