経営学者のP・F・ドラッカーは目標を設定することの重要性を説いている。著書『マネジメント 基本と原則』(ダイヤモンド社)の冒頭に、一節を設けていた
▼そこではアルキメデスの「立つ場所を与えてくれれば世界を持ち上げてみせる」を引き、この「立つ場所」こそが大切だと教えている。「立つ場所」とは集中すべき分野。その目標があって初めて「われわれの事業」を明確に定義できるというのである。それがないと良質の人材と資金を引き寄せられなくなるとドラッカーは言う。組織が衰退する最初の兆候は「有能でやる気のある人間に訴えるものを失う」ことらしい。党の代表といえばトップマネジメントを担う人物である。さて、立憲民主党の泉健太代表が打ち出した目標は適切だったのかどうか
▼10日の両院議員懇談会で、次期衆院選の獲得議席が150未満なら辞任するとの意向を表明した。現在、立民に所属する衆院議員は97人。企業なら売り上げをいきなり1・5倍にする目標である。「立つ場所」が分からず、中身の改善もないのにどうして実現しようというのだろう。NHKの最新世論調査で立民の支持率は5.3%と低迷を続けている。与党自民党への攻撃は激しいが、それで支持率が伸びる気配も、良質な人材が集まってくる様子もない
▼泉代表は決意と覚悟を述べたのだという。ただ、現実離れした目標は社員のやる気をそぐ。党も同じに違いない。ドラッカーの言葉はさらに続く。「目標は、実行に移さなければ目標ではない。夢にすぎない」。目を覚ました方がいい。