ユーラスエナジーホールディングス(HD、本社・東京)子会社の北海道北部風力送電(同・稚内)が豊富町で整備した、風力発電専用の送電網設備が完成した。風況に対応するため出力抑制技術と国内最大級の蓄電池を設置。2025年までに9カ所の風力発電所を新設して連系させ、全道に送電する計画だ。実現すれば道内の風力発電導入量が倍増する見通し。16日に現地で竣工式を開き、完成を祝った。
資源エネルギー庁が13年に風力発電の導入拡大を目指し、北海道と東北で送電網の強化を実証する一環。風力発電の適地ながら送電網が脆弱(ぜいじゃく)だった北部地域を対象とし、同社が参加事業者に選ばれた。
18年度に着工。送電網の整備と並行し、25年までにユーラスHDやコスモエコパワー(本社・東京)、豊富WindEnergy(同・札幌)の3社が豊富町や稚内市で9カ所の風力発電所を新設する。
豊富と稚内の発電所から電力を送る開閉所から北豊富変電所に至る全長78㌔の送電網を敷設。総事業費は1050億円に上る。5月中に発電所1カ所が稼働する。
余剰電力は北海道電力ネットワークの西中川変電所(中川町)に売電し全道に送る。最終的に最大出力は合計54万㌔㍗となり、22年9月時点での道内の風力発電導入量60万㌔㍗に匹敵する規模となる。
風況による変動を抑えるため、安定的に電気を届ける仕組み。北豊富変電所に国内最大級となる容量72万㌔㍗時の大規模蓄電池を設置。エネルギーマネジメントシステムで充放電を指示するほか各発電所に出力抑制を指令する技術を導入した。
竣工式ではユーラスHDの諏訪部哲也社長や同HD親会社である豊田通商の貸谷伊知郎社長、稚内市の工藤広市長らが出席。吉村知己北海道北部風力送電社長はあいさつで「コロナ禍など厳しい環境下での事業となったが、完成に至ったのは皆さんのおかげ」と感謝を述べた。
ユーラスHDの諏訪部社長は「道北地方は風力発電に恵まれた地域。潜在力を生かすため国や大手電力と協力できれば」と今後を見据えた。