先週金曜日の読売新聞を読んでいて、地域版のある記事が目に留まった。地域おこし協力隊員の山田陽子さんが、白糠町のシンボル「太陽の手」を紹介する内容である
▼それは町中心部を望む坂の丘公苑墓地にある高さ約13mのモニュメントで、役場設置80年を記念し、1966年に建立された開拓功労者顕彰碑。具象彫刻家の本郷新さんが制作したそうだ。山田さんにとって、「太陽の手」は話し相手なのだという。自分はどう歩むべきか、「白糠を開拓してきた先人たちに語りかけて」いるのだとか。感銘を受けた。これほど意義のあるモニュメントとの接し方も他にあるまい。今まさに身近なモニュメントの残念な末路を目にしているだけに、その思いはひとしおである
▼野幌森林公園にそびえ立っていた北海道百年記念塔の解体がきょうも進む。老朽化はその通りなのだろう。ただ、本質は維持補修費の不足。赤字再建団体への転落を防ぐため、高橋はるみ前知事が断行した財政立て直しのあおりを受けた。風雪を乗り越えてきた人々の開拓の歴史を語る記念塔が、金食い虫扱いで撤去されるのだから寂しい。たかが物体というなかれ。高さ100mの塔には先端まで、後に続く者たちの開拓者への敬意が込められていたのである
▼文化庁の「建築文化に関する検討会議」が25日、近現代の名建築や景観の維持管理、活用を推進するため、必要な制度や予算を検討すべきとの提言をまとめた。記念塔もその価値は十分だったかもしれないが、間に合わない。先人たちに語りかける場がまた一つ消えていく。