社会通念から逸脱した理不尽な校則を俗に「ブラック校則」と呼ぶそうだ。従業員の人権や健康を無視する「ブラック企業」を援用した言葉だろう。実際、子どものころ、おかしな校則に悩まされた人も多いに違いない
▼髪の長さや服装は定番で今更驚きもしないが、冬にマフラーやコートが禁止と聞くと頭に大きな疑問符が浮かぶ。校則に黒髪とあるため、地毛の茶髪を黒く染めるよう強制された例もあるのだとか。学校や教師が目の前の現実を見ようとせず、ルールにのみしばられているからそんな人を人とも思わない対応ができるのだろう。教育のための校則なのに、校則が威張って一人歩きしている
▼学校は狭い社会だからと笑ってばかりもいられない。どうやらこちらでも「ブラック」がまかり通っているようだ。全仏オープンテニスの女子ダブルス3回戦で、加藤未唯選手の打球が誤ってボールガールを直撃。危険行為と認定されてその場で失格の上、ポイントと賞金まで没収された一件のことである。審判は当初、警告としたものの、対戦チームの猛抗議で一転、失格を言い渡した。ビデオを確認してくれとの加藤選手の要望にも、ルールにないからと一切耳を貸さなかったらしい
▼多くの選手や報道関係者は審判への非難一色。そんな中で11日、全仏の責任者が失格はルールブック通りだと審判への支持を表明した。ばかげたブラック校則を盾に、思うまま生徒を押さえつける教師をかばう校長といった構図である。選手たちが最高の力を出せるようルールはある。本分を忘れているのでないか。