地方の有力大名が自らの支配地拡大にしのぎを削る戦国時代でも、共通の敵や利害の一致がある時にはしばしば同盟が結ばれた。中でも最もよく知られたものは、尾張の織田信長と三河の徳川家康(当時は松平)が組んだ「清洲同盟」だろう
▼織田と松平はもともと敵対関係にあり、積年の恨みつらみがあったものの、当面の安全と双方の領土拡大を考えると他に選択肢がなかったのである。同盟は20年続いたという。こちらも、きのうの敵はきょうの友ということらしい。「クロネコヤマト」の愛称で知られる宅配便大手のヤマトホールディングスと日本郵政が19日、メール便や小型薄物荷物で協業すると発表した。いわば「クロネコJP同盟」である
▼ヤマト運輸が預かるメール便の「クロネコDM便」と小型薄物荷物の「ネコポス」を、それぞれ仮称「クロネコゆうメール」、「クロネコゆうパケット」として日本郵便の配送網で届けるそうだ。クロネコが赤いバイクや軽のバンに乗ってやってくるのである。ヤマトと郵政は長らく宿敵の間柄だったといっていい。ヤマトは実質的に郵政だけが扱える信書を巡り、30年以上前から規制を見直すべきと主張してきた。ローソンでの「ゆうパック」取り扱いを独占禁止法違反と訴えた例もある
▼今回、ライバルだった二社が協業化に踏み切った理由はドライバー不足が深刻化するいわゆる「2024年問題」や脱炭素社会実現への貢献。ネット通販の増加やコロナ禍による運送環境の激変も影響していよう。物流業界にとっては今が戦国の世なのかもしれない。