18日、八雲町野田生の国道5号で発生したトラックと都市間高速バスの正面衝突事故は、5人が犠牲となる非常に痛ましい結果となった。バスの乗客にとっては楽しい休日が一転、惨事となってしまい、そのショックや恐怖は計り知れない。道内全体でこうした悲劇を二度と生み出さないためには、道路のたゆまない安全性向上への予算確保と、衝突事故を防ぐ最先端の研究や運転マナーの徹底順守、工事を担う地域建設業者の存在が不可欠だ。
国道を所管する北海道開発局は、2010年度から事故危険区間重点解消作戦(事故ゼロプラン)を展開してきた。危険な道路や交差点には舗装路面を波形に削りスピードを抑止するランブルストリップス設置やカラー舗装化を進めてきた。片側1車線の高速道路では正面衝突を防ぐワイヤロープも導入されている。
道警のまとめによると、22年の死亡事故発生件数は113件、死者数は115人で、12年と比較すると件数は71件、死者数は85人減少した。この間、自動ブレーキなどの運転支援システムやドライブレコーダーといった事故防止につながる機器も発達してきたが、地道な道路環境の改善も実を結んでいると言えるだろう。
事故の発生箇所に目を向けると、現場を含む八雲町落部―内浦町209間は13年度に事故危険区間として選定されていたが、直近では重大な死傷事故がなかったことから、対策の対象とはなっていなかった。
幅員は片側歩道1.5m、車道7.5mの全幅9mと標準的で、カーブも曲率半径900mと緩やかだ。その半面、地元住民の間では、道路の線形や風景の単調さから眠くなったり、注意力が落ちたりするといった指摘がある。沿道に民家や学校が点在することから開発局の担当者は「中央帯へのワイヤロープの敷設は難しい」との見解だが、ランブルストリップスの配置などできることはあるはずだ。
しかし、予算も、工事を担う建設業の担い手も無限ではない。特に供用中の道路の改良は夜間に施工する場合がほとんどで、技術者、技能者の労働負担の軽減が課題となる。24年度には建設業に対して時間外労働の罰則付き上限規制の適用が始まり、道路改良の現場でも一層の労働環境改善と人材確保が求められる。
国道は物流、医療、観光、防災・減災などで重要な役割を担う。犠牲を無駄にしないためにも安全な道をつなぐ努力を途絶えさせてはならない。(函館支社・鳴海太輔)