カナダ沖北大西洋で沈没した豪華客船タイタニック号の見学ツアーに出掛けた潜水艇タイタン行方不明事件は、海底で残骸になっているのが見つかるという最悪の結果で終わった。水圧で急激に押しつぶされ、原形をとどめていなかったという
▼詳細な原因究明はこれからだが、高圧に耐えられる船体状況でなかったことだけは間違いない。今まで数多く成功させているから今回も大丈夫との過信があったのでないか。報道によるとタイタンは運営会社が潜水艇に必要な検査をすり抜けるため、実験船の名目で使っていたそうだ。ところが現実には、周辺国の目の届かない公海で営利目的のツアーを繰り返していた。無責任のそしりは免れまい
▼安全運航に問題のある船体と無責任な運航会社。不幸にもその二つがそろうと、時に悲惨な事故が起きる。知床半島沖で昨年の4月、小型観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」が沈没、乗客乗員26人全員が死亡した事故もそうだった。現場も状況も違うが根は同じだろう。運輸安全委員会が29日、現在までに判明した事実を公表。事故2日前の訓練時に船首甲板のハッチが不具合で閉まらず、数センチほど浮いた状態だったと指摘した。その後修理した様子もなかったという
▼これまでの調査で、沈没は船内に海水が流入したためだと分かっていた。聞き取りに対し運航会社の社長は、報告がないためハッチの不具合もなかったと回答したらしい。自分の責任まで船長に丸投げしているようだ。多くの人の命を預かる者の認識とは思えない。どちらも防げた事故である。