ラピダス(本社・東京)の次世代半導体工場新築を巡り、建設地の千歳市周辺自治体によるネットワーク組織が25日にも発足する。石狩と空知、胆振管内の自治体が参画する見通し。3月に立ち上がった北海道次世代半導体産業立地推進連携会議の下部組織として位置付け、ラピダスの計画や工場建設に関連する各市町村の情報を共有。次世代半導体製造拠点の実現に向けて連携を密にする。
ラピダスは、千歳市の工業団地「千歳美々ワールド」に工場を新築する。設計・施工は鹿島で、9月の本格着工後、2025年の試作ライン稼働、27年の量産開始を目指している。5月に千歳市で開いた説明会で、同社は北海道バレー構想案を発表。千歳市の工場を軸に苫小牧市、千歳市、石狩市を結ぶ一帯をDX・GXの拠点を目指している。
道も、工場を中心に半導体関連の産業集積や素材研究、人材育成機関などが立地する複合拠点を計画し、道内全域に波及効果を広めたい考えだ。実現に向けて、中長期的な取り組み方針となる仮称・北海道半導体産業振興ビジョンを年度内にまとめる。
鹿島のピーク時の作業員は6000人を見込み、工事を担う鹿島が建設地に2000人分の宿舎を設け、残りの4000人分は千歳や恵庭、江別各市などで賃貸住宅需要を賄う動きがあるため、各自治体もラピダスの動向を注視している。
北海道次世代半導体産業立地推進連携会議は3月に立ち上がり、北海道経済産業局、北海道開発局、北海道労働局、環境省北海道地方環境事務所、千歳市、道で構成する。
ネットワークは、情報共有による連携強化が主な目的となる。工業団地を造成する栗山町の佐々木学町長は、企業誘致につながるような情報交換の場と捉えていて、苫小牧市の企業政策室港湾・企業振興課の担当者は「次世代半導体について正直知らないことが多く、情報共有できれば。市だけで考えず、東胆振が一体となることが大事だ」と期待を寄せている。
この取り組みに関連する説明会も開かれる見通し。自治体だけでなく商工会議所なども想定し、ラピダスの事業計画や関係自治体の取り組みなどを共有し、地域経済の活性化を目指す。
ラピダスの進出に伴い、事業の実現に向けた各機関の連携が活発化している。北海道次世代半導体産業立地推進連携会議以外にも、経済団体が入る北海道企業誘致推進会議や道経産局主導の北海道半導体人材育成等推進協議会が発足した。
各自治体が巨大な複合拠点を基軸に産業振興へ協力するとともに、関連して立地する進出企業の誘致や技術者や作業員らの住居などを確保し、相互に生まれる相乗効果を期待しているとみられる。