自分は日頃から平気で人を傷つける言動をとっているのに、ささいなことでも他人から指摘されると烈火のごとく怒り出す人がいる。そういえばと、誰でも一人や二人、身の回りで顔が思い浮かぶ人もいるのでないか
▼どこに地雷が埋まっているか分からないのだ。付き合うにはかなり厄介な部類の相手である。ただ「自分を棚に上げる」との慣用句もあるくらいだからめったに見掛けないほど珍しいタイプではない。それが持って生まれた性格なら仕方のないところもあろう。困るのは状況を自分に都合よく操るため、あえてそんなきつい態度を装う人も中にはいることである。何らかの意図を成就するのが目的だから、対象が自分の前にひざまずくまでやめることはない
▼人ではないが、中国政府もよくこの手を使う。今回もまた始まったようだ。東京電力福島第1原子力発電所のALPS処理水海洋放出を前に、中国の税関当局が日本からの輸入海産物全てについて、放射線検査を徹底すると決めたのである。海産物は鮮度が命。検査に時間がかかっては輸出もままならない。無理して輸出する必要はないとも思うが商売が立ち行かなくなる人もいるのだろう
▼そもそも中国の原発が福島の6・5倍ものトリチウムを海に放出しているのは周知の事実。1996年まで地上を含め46回も核実験を実施していた。そんな国が国際基準に照らして安全な処理水に難癖を付けているのである。中国の覇権主義と向き合う日本をけん制する狙いのようだが、自分を棚に上げて拳を振り上げる姿は滑稽というほかない。