土木学会と地盤工学会、地すべり学会、砂防学会の各北海道支部が4学会連絡会を組織し、本格的な活動を始めた。民間企業や研究機関、行政団体で働く研究者や技術者が専門分野を横断して連携し、知識と技術を結集して巨大地震や津波、噴火など未曾有の自然災害に立ち向かう。有事の際に機動的な体制が組めるよう、平時から災害発生のメカニズムや社会インフラの応急復旧などで知識や意識の共有を図るほか、次代を担う若手技術者の育成にも力を入れる。
4学会連絡会は4月1日付で発足した。複合的な要因が絡むことで復旧・復興が阻まれた東日本大震災を契機に建築、土木学会などがスクラムを組み、専門家集団を立ち上げたことは知られているが、本道で地域の安全安心を守るスペシャリストが賛同して組織を設けたのは初めて。
発足前の3月末には北海道開発局と土木、地盤、地すべり、砂防学会の4支部がまとまって災害協定を締結し、実質的な活動を始めている。開発局としては、地震をはじめ豪雨や暴風などの自然災害が相次ぐ中、専門家の助言を生かし、早期の応急復旧に役立てようという考えだ。
土木学会道支部の太田祐司前支部長が構想を温め、準備を進めてきた。「学問の専門分野が高度化、多様化し、分業化してきた背景がある。昨年6月に砂防学会道支部が誕生したことで、4団体が大同団結する機運が醸成できたと感じた」と話す。
土木学会は2014年の100周年を記念し、「あらゆる境界をひらき、持続可能な社会の礎を築く」と宣言。道支部は17年に発足80周年を迎えるが、太田前支部長は「活動を総点検すると形骸的な部分が見えてきた。組織自体の硬直化も大きな要因となっている」と考えて決断を下した。
幹事支部は、土木学会道支部を皮切りに毎年持ち回りで担当する。連絡会メンバーはそれぞれの支部長や副支部長、支部幹事長ら12人で構成。年1回の定例会で活動方針などを決める。
今後の連携としては、防災・減災に関する講演会やセミナーを開くほか、各支部が論文発表する土砂崩壊や河岸決壊、道路陥没などのメカニズム、社会インフラのメンテナンスと応急復旧について情報共有を図る。土木学会道支部が小学生を対象に実施した防災探検隊を参考とし、地域の防災教育なども検討する。
連絡会は「産学官で活躍する研究者や技術者の特性をどう生かすかがとても重要だ。そうした意味で他学会の活動を知ることは有意義」と平時の取り組みに力点を置く。他学会との連携も模索する考え。
次代を担う若手技術者の育成については、大学の学科によって就職の間口が狭いという現状もあることから、身に付けた資質や能力が十分に発揮できるよう、就職説明会や合同ワークショップなどを開いて人材の流出を防ぎ、技術者層を厚くする試みにも挑む。