傾斜マンション、道内にも波紋ー「見えないからこそより厳格に」

2015年10月23日 19時15分

 横浜市のマンションが傾斜した問題で発覚した、基礎杭の施工データ改ざんと施工不良が、道内の基礎工事関係者に波紋を広げている。関係者の一人は「見えないところだからこそ、見えるところ以上に厳格でなければならないのに」と話し、突然の不信に困惑の声を漏らした。道内の元請け建設会社は、マンション販売会社からの問い合わせに納得のいく説明を求められるなど対応に追われている。

 「長年基礎工事をやってきたが、杭を打っていて建物が傾くという話は聞いたことがない」。首都圏とは地盤特性に違いがあるが、道内で工事を展開する基礎施工関係者は驚きを隠さない。

 問題のマンションでは、4棟を支える基礎杭473本の70本で施工データの転用や加筆、改変が判明。うち傾いた1棟の8本が固い地盤に達していないなど施工不具合が表面化した。

 工事を施工した旭化成建材(本社・東京)の親会社・旭化成が20日に発表した調査内容によれば、データ改ざんの理由は機器のスイッチ入れ忘れによるデータ取得失敗や用紙紛失と推定。不具合のあった杭の施工は判断ミスや地形的な特性による理由と指摘し、意図的なものではないとの見解を示した。

 道内の基礎関係者は「データ取得に失敗することはある」と、時にデータ取得の失敗があることは認める。その場合は元請けの管理者などと協議し、周囲の施工データとの総合的な判断でそのままにするか打ち直すかを決めるという。

 ただ問題のマンションのように、全体の約7分の1の杭で取得に失敗するのは「多い」との見方。この物件は、工程が複雑で納期厳守の民間マンション工事。「現場責任者には当然工期へのプレッシャーはあっただろう」と別の関係者は話す。

 複数の事業者が「掘り始めは関係者が立ち会い、試験掘りで地盤を確認する。その後は、設計と施工データを比較し、慎重に地面の固さを確認して打つのが当たり前。支持層に達した場合は分かるが、当然確認も取る」という。

 「見えないからこそシビアにならなければ大変なことになる。ただ国民からみれば、基礎工事の施工に区別はつかない」。モラルで守ってきた基礎工事の安全に投げ掛けられた不信。その影響の広がりを懸念する。

不正を許す仕組みに驚き

 道央圏に本社を置く地場中堅ゼネコン幹部は、「杭打ちには自社の現場代理人と基礎工の担当者、建築設計士が立ち会い、みんなで確認する。データ改ざんなど絶対にあってはならない。生命と財産を守る建設業として、モラル以前の問題」と憤りを隠さず、不正を許す仕組みがあることに驚いている。

 同社によると、杭打ち工程では代理人が常駐し、支持層に届いたかを3者で電流計データと照らし合わせながら進める。逐次の報告と連絡は欠かさず「どこまで掘ったかを常時現場は把握している。支持層に届かずに終わることは決してない。それは会社が信頼を失い、経営を危うくするからだ。道内で不正はないと信じている」と話した。

 横浜のデータ改ざんが報道されて以降、道内の地場ゼネコンは自主的に過去の施工物件を洗い直している。道内大手の地場ゼネコンは、過去10年にさかのぼり手作業で施工物件を調べている。

 マンションや高齢者福祉施設、複合商業施設など、物件は最大で約1000件に上る。その合間にマンションデベロッパーやマンション管理組合からの問い合わせに応じている。「旭化成建材の施工かどうかを回答し、不安を和らげるよう努めている」と担当者。

 道内の建設業を取り巻く環境は、建設労働者の不足や資材高騰のあおりで適正な利益が得られにくいのが実情。「そのような中で誠実に施工している。1人のモラル欠如が建設業全体を揺るがし、最終的にゼネコンが悪いと片付けられてはやるせない」と肩を落とす。

信頼回復の正念場が待つ

 建設業界にとっては、2005年に構造計算書の偽造が発覚した姉歯事件以来の衝撃的な出来事。社会への信頼を回復するため、業界各社はコンプライアンスやCSR(企業の社会的責任)の強化に努めてきた。しかし一方では行政機関での建築確認業務が滞り、しばらくは地域経済に負の遺産をもたらした。

 国土交通省など関係官庁がどのような対策を取るかにもよるが、企業ブランドを守り続けてきた地域建設業にとって厳しい正念場が待っているのは確かだ。


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