函館・川元建設がベトナム人実習生を受け入れ5年-現地に法人も

2015年12月15日 19時28分

 川元建設(本社・函館)がベトナム人技能実習生の受け入れを始めて5年が経過した。採用実績は20人に達し、今秋から国土交通省の外国人建設就労者受け入れ事業で、かつての実習生5人が就労者として活躍している。また、ベトナムに現地法人を設立し、帰国後の就業支援も本格化。両国の懸け橋となるリーダーを育成し、ベトナムなど東南アジア進出への足掛かりにしようと考えている。

 同社はトンネル、PC橋梁などを手掛ける専門工事業で、官公庁や大手ゼネコンを主な取引先とする。以前、ハノイ市内の訓練校を視察した際、ベトナム人の勤勉さに触れ、受け入れを決意。2011年7月に4人を採用した。

 初めての配属先は、北斗市内で進む北海道新幹線高架橋の現場だった。マンツーマンでとび、鉄筋、型枠の基本を教える日々。当時は言葉や文化の違いからか互いに戸惑う場面もあったが、日を追うごとに解消され、順応していったという。

 また、後輩実習生の存在が励みや刺激にもなった。同社は11年以降、毎年4人の採用を続け、切磋琢磨(せっさたくま)できる環境を構築。同世代の同僚と情報交換できるようになり、プライベートの充実にもつながった。

 1期生が帰国する14年には「ベトナムと日本に活躍の場があればいい」(川元正和社長)と、首都ハノイに事務所を開設。2人を選抜雇用し、入国前の実習生を対象とした国際人材育成機構の特別訓練へ講師派遣を始めた。

 同機構と共同の特別訓練は、日本の工具や資材を使いとび、鉄筋、型枠3職種の安全管理や現場ルールなどを教える。実体験による指導は好評で、国交省の人材活用モデルにも選ばれた。今月3日には視察団が、就労者の実態を把握するため管内を訪れている。

 現在は、就労者5人と実習生12人が、全国各地のトンネル、橋梁などの現場で腕を磨く。うち、函館港有川部臨港道路のPC橋架設現場で、鉄筋工として働くドゥオン・ト・リーさん(27歳)は、ベトナムで1年間講師を務めた一人だ。

 リーさんは、後輩への指導を経験し「自覚と責任感が生まれた」と話し、同時に「もっと日本の建設技術・技能を学びたい」との思いも持ったそう。将来は「学んだことを生かし、ふるさとで大きなプロジェクトに関わり、発展に貢献したい」と考えている。

 今では、日本語でのやりとりもほぼ問題なくこなし、図面を読む力も付いた。できることが増え、やりがいを感じている。12月に入り氷点下の日もあるが「北海道の冬は4度目。すごく寒いけど大丈夫」と笑う。

 本来、外国人建設就労者受け入れ事業は、東日本大震災復興事業や東京五輪などに伴う一時的な建設需要の増大に対応するもの。しかし、同社では、人材不足にも対応させつつ、その先を見据えた一手としてベトナム人を雇用し続けている。

 川元社長は「将来、海外展開する上で、日本の技術・技能や安全のノウハウを持つ、現地に精通したリーダーは必要」と考え、「この事業を通じて、両国の発展に貢献できれは」と話している。


関連キーワード: 人材育成 企業

ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

e-kensinプラス入会のご案内
  • web企画
  • 川崎建設
  • 日本仮設

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

おとなの養生訓 第245回 「乳糖不耐症」 原因を...
2023年01月11日 (1,395)
函館―青森間、車で2時間半 津軽海峡トンネル構想
2021年01月13日 (1,257)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (1,238)
アルファコート、北見駅前にホテル新築 「JRイン」...
2024年04月16日 (1,108)
藻岩高敷地に新設校 27年春開校へ
2022年02月21日 (886)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第258回「体温上昇と発熱」。病気による発熱と熱中症のうつ熱の見分けは困難。医師の判断を仰ぎましょう。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第34回「1日2470個のご飯粒」。食品ロスについて考えてみましょう。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第32回「読解力と認知特性」。特性に合った方法で伝えれば、コミュニケーション環境が飛躍的に向上するかもしれません。