台風7号に端を発する本道の大雨被害。土木学会水工学委員会は、被害が大きいことから災害調査団を結成し、被害地域や被災インフラを緊急調査した。9月中旬には速報版の報告書をまとめ、29日、北大で緊急報告会を開いた。調査団は記録的降雨の連続など本道の気象環境が従来と異なることを強調。被害発生メカニズムの一端を示しながら、降雨量の増大や連続を踏まえた計画見直しや新たな認識に立った対策検討の必要性を提示した。
調査団は清水康行北大大学院教授を団長に学識者や研究員ら19人で構成。台風7号、11号、9号の3連続台風と台風10号通過の大雨がもたらした大雨被害を緊急調査した。
速報結果は13日、土木学会のホームページに掲載。29日には北大学術交流会館で報告会を開き、集まった450人に水系別の被害や対策の方向性を示した。
8月の大雨被害では、連続した3台風による降雨で、石狩川、常呂川が計画高水位を越えるなど広い範囲で出水被害が生じた。
続く台風10号の通過では、日高山脈付近で豪雨となり十勝川や札内川で計画高水位を超過。空知川幾寅築堤、札内川と戸蔦別川合流地点堤防が決壊し、空知川では南富良野町市街の広い範囲が浸水した。河川増水、土砂災害で道路や橋梁の流失など交通インフラの被害も大きかった。
調査団幹事の中津川誠室工大大学院教授は「地点によっては3日間で札幌の年間降水量の半分に当たる500㍉を超える記録的な大雨となった」と経験のない気象状況となったことを強調。
被害が大きくなった要因を「大雨が断続的に続き地盤の吸水力が飽和状態になった。河川の水位が下がる前に大雨が降るため、河川流量が増え大きな出水条件ができた」と解説した。
清水教授は「ダムのある河川は被害が少ない。その貯水能力の効果が発揮された」とし、ダムのない河川や上流域、未整備の中小河川で被害が大きいことを指摘。堤防被害は、河川蛇行から浸食が発生し損傷、決壊に至るケースが多く、自然堤防で被害が大きいことから、護岸整備の重要性を提示した。
また、氾濫水が地盤の弱い昔の河川跡をたどったケースもあり「昔の河川跡の情報はハザードマップや防災情報に有効」との見方を示した。
対策の方向性として降水量が増大する気象条件の変化や、連続する降雨に対応した対策検討や河川計画見直しの必要性を示した。
加えて「あふれた場合どうするかという視点も重要になる」と強調。交通遮断や水害への備えなどソフト施策とともに「越流しても破堤しない堤防構造の検討、氾濫した水を川に戻す方法など、まちづくりを含め考える必要がある」と論じた。