北海道開発局と道は、学識経験者らで組織する「2016年8月の大雨災害を踏まえた水防災対策検討委員会」の事務局案として、今後の水防災対策のあり方案をまとめた。地球温暖化に伴う気候変動の影響が特に大きいと予測される北海道から、気候変動を考慮して治水対策を講じる新たな手法を始めるべきと提起。ハード対策とソフト対策の総動員など、7項目にわたる具体的な取り組みも示した。
27日に道庁赤れんが庁舎で開いた同委員会の第3回会合で提示した。
あり方案は基本方針で、16年8月の大雨災害について「気候変動による水害の激甚化の予測と懸念が現実になったものと認識すべき」と指摘。今後は「次世代に負担を残さぬよう、気候変動への対策に取り組まなければいけない」とし、気候変動による外力の増大を踏まえた設計をするなどの適応策を、気候変動の影響が特に大きいと予測される北海道から先導的に取り組むべきと提起した。
従来は過去の降雨実績に基づいて治水計画を立てているが、本道はこれまで降雨量が少なかったことから、これに加えて気候変動による将来の影響を予測・評価し、具体的なリスク評価を基にして治水対策を講じるべきと記した。
また、無災害で済む可能性の高い地域・範囲の拡大を図り、16年8月の大雨災害でも大きな被害軽減効果を発揮した治水施設は「整備は引き続き必要」と明記。
ただ今後は、気候変動によって災害の規模が大きく、頻度も高まることが予想されることから、「施設では守り切れない洪水が必ず発生するとの認識の下で、道民、地域、市町村、道、国などが一体となり、あらゆる対策を総動員し、北海道全体で防災・減災対策に向けた取り組みを推進すべき」とした。
具体的には、①気候変動を考慮した治水対策②ハード対策とソフト対策の総動員③避難の強化と避難体制の充実④支川や上流部などの治水対策⑤既存施設の評価・有効活用⑥許可工作物などへの対応⑦生産空間(農地)の保全―の7項目を設定している。
委員長の山田正中央大理工学部教授は、気候変動による将来の影響を考慮して治水計画を立てる新たな手法について、当たり前と思われていた考え方が革命的に変化する「パラダイムシフトだ」と述べ、高く評価した。
開発局と道は、委員会の提言としてあり方を年度内に成案化する。関係機関の役割分担や取り組みの時間軸を定めた行動計画も策定する予定。また、モデル流域を設定し、全道展開に先駆けてあり方に盛り込んだ取り組みを進める考えだ。