日本は四季がはっきりした国といわれるが、秋だけはどうもその訪れが分かりにくい。雪が降ると冬で解けると春、夏日が日常になると夏とそれらの季節は迷うことなく実感できるのだが、秋はいつもふと気付くと秋なのである
▼詩人で仏文学者の堀口大学の随筆にも夏の終わりころのこととして「朝夕の空気の中に、今までに感じられなかった秋のバイキンがひそんでいたことは否みがたかった」との記述があった。感性の鋭い詩人にしてこうなのだから、やはり夏と秋の境目は判別をつけ難いものなのだろう。ただ、この日を過ぎれば誰の気持ちにもくっきりと季節の線が引かれる。それがきょうの秋分の日である
▼秋と聞いて思い浮かぶのは「収穫の秋」と「スポーツの秋」。となれば季節の線を引くだけでなく、生活習慣病を予防するための決心の線を引くにも最適の日といえるのでないか。厚生労働省がおととい、糖尿病を強く疑われる人が全国で初めて1000万人の大台に乗ったとの推計を発表した。2016年に20歳以上の男女約1万1000人を対象に実施した国民健康・栄養調査で明らかになったという。主な原因は高齢化で、臓器の機能低下や肥満が増加に拍車を掛けているらしい
▼加えて予備軍も1000万人いるのだとか。「バイキン」のように社会に潜み、じわじわと日本をむしばんでいるわけだ。進行すると様々な合併症を起こす怖い病気だが、対策は生活習慣の改善に尽きる。旬の野菜を多く食べ、適度に体を動かす。この秋は「天高く体引き締める秋」としたいものである。