▼風邪で寝込んでいるときに限って食べたくなる物がある、という人はきっと少なくないだろう。筆者が子どものころはミカンの缶詰だったが、人に聞くとすしだったりアイスだったりいろいろである。作家宮尾登美子にとってそれは蒸しずしだったそうだ。エッセイ「かぜひき」に書いている。「寝床でものを食べてはいけないという禁忌も、この日ばかりは大目に見て」もらえるのもうれしかったらしい。
▼そんなことを思い起こさせる時期がまたやってきた。インフルエンザの流行が、全国的に広がりつつある。国立感染研究所が1月29日公表した「流行レベルマップ」によると、注意報が37都府県、警報が7道府県だそう。道感染情報センターの警報はまだ根室だけだが、全道的に患者は増加傾向にあるようだ。乳幼児を持つ親御さんや高齢者を抱えた家庭は特に心配だろう。感染してもおいしいものが食べられるくらい体力があればいいが、熱が高いときは水分を取ることさえ難しい。
▼大切なのは感染しないことである。どうやらしっかり手洗いすることに勝る予防法はないらしい。おかしいな、と思ったらすぐに受診することだ。感染していたらすっぱり休む。宮尾登美子は「大ていの人には病臥願望というもの」があるとも書いていた。家族にいたわられ、のんびりとした時間を楽しめるからだとか。いや休むと職場に迷惑が、と気兼ねする人もいよう。サラリーマン川柳(第一生命)にこうあった。「インフルで会社休むも支障無し」。案外とそんなものである。