啓蟄と就活

2016年03月05日 09時10分

 ▼寒さ厳しい冬は人間にとって過酷だが、昆虫にとっては平和な季節であるらしい。『虫のはなし』(技報堂出版)によると、活動期の夏はいつ天敵に食べられてしまうか分からない「受難の季節でもある」とのこと。土中でのんびり眠りながら冬を越している間に、寒さも飢えも通り過ぎてしまうのだとか。きょうは旧暦二十四節気の啓蟄だ。昆虫たちもそろそろ身支度を整えていよう。活動の季節である。

 ▼啓蟄で出てくる虫はもともと、昆虫だけでなく冬眠の習性を持つヘビより小さな生物を指していたそう。「啓蟄やただ一疋の青蛙」(原石鼎)の句もある。幸田露伴は「蛇穴を出れば飛行機日和なり」と詠んだ。自身をヘビとし、暗い穴から出ると爽やかな青空が広がっていたのだろう。解き放たれる喜びが感じられて味わい深い。とはいえ本道は3月に入ってから大荒れの天気に見舞われ、真冬に逆戻りした感がある。啓蟄の「け」の字もないのが実際で、春はまだお預けのようだ。

 ▼啓蟄とほぼ時を同じくして本番を迎えたのが2017年春卒業予定者の就職活動である。1日に会社説明会や広報活動が解禁になった。ことしは面接や試験といった選考が昨年より2カ月早い6月からに前倒しされるため、短期決戦型になるようだ。毎年のように変わる採用日程に学生も戸惑っているだろう。何はともあれ走り回る日々ではないか。ただ、就活だけで燃え尽きたりはしないでほしい。就職が決まって穴を出たら、そこに見たことのない爽やかな青空が待っているはず。


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