▼47都道府県の中で片や北東の端、片や南西の際と最も距離が離れている地域なのだが、北海道と沖縄には共通点がある。それは何か。聞けばほとんどの人が「確かにそう」とうなずくだろう。答えは地元愛が並外れて強いこと。『週刊ダイヤモンド』がことし3月26日号で、ブランド総合研究所がまとめた「都道府県出身者による郷土愛ランキング」を紹介していた。それを見て再認識させられたのである。
▼「愛着度」の指標で北海道が1位、沖縄が2位だった。実際、就職や進学では地元志向が強く表れるとの話を周りでもよく聞く。沖縄もきっと同じだろう。きのうは住民の4人に1人が亡くなったといわれる太平洋戦争末期の沖縄戦から71年目の「慰霊の日」。平和祈念公園で行われた戦没者追悼式をニュースで見ながら、人も古里も徹底的に破壊された沖縄の悲しみを思うとともに、それを乗り越えてなお変わらぬ郷土愛を抱き続けている人々に少なからず感銘を受けたわけなのだ。
▼戦後も占領、米軍駐留と過酷だった。郷土愛を失わなかったのは北海道同様、おおらかさを育む土地柄故だろう。ただ基地問題に関しては日本人の多くがそのおおらかさに甘えていたのでないか。夏目漱石は『道草』に「一遍起こった事は何時までも続くのさ。ただ色々の形に変わるから他にも自分にも解らなくなる」と書いた。沖縄にとって基地は戦争や占領が形を変えたもの。沖縄の郷土愛が、多くのしかばねをも包み込んだものであることを忘れては、問題の解決などできない。