童謡詩人金子みすゞは代表作「星とたんぽぽ」で、「見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ」と歌っている。題名でも分かる通りみすゞは、昼の星や春が来るまで隠れているたんぽぽの根を思い描いた。ところで「見えぬけれどもある」ものはもちろんこれだけではない
▼おとといも一つ、そんな例にお目にかかった。それは国会の参議院決算委員会での質疑。叙情性のかけらもなく恐縮ではあるが。最初に質問した自民党の西田昌司議員が、経済再生とデフレ脱却のための財政出動について安倍首相に答弁を求めたのである。この一連のやりとりを新聞やテレビで見てつぶさに知っている、という人はほとんどいないのでないか
▼マスコミは財務省の決裁文書書き換えや陸上自衛隊のイラク派遣日報隠蔽(いんぺい)問題にばかり注目しているため、報道する価値なしと判断したのに違いない。これでは質疑そのものがなかったように見えるが、実際はあったのである。しかも重要な内容を含む。首相はこう答えた。「公共事業に悪いイメージを持つ人はいるが、インフラ整備は未来への投資で次の世代に引き渡す資産」「借金をすると必ず次の世代に負担になるとの考えはやめた方がいい。未来を切り開くことを考えねばならない」
▼忘れてならない基本だろう。日本はこれまで計画的な財政出動でインフラ整備を進め、未来を先取りしてきた。過度な緊縮財政ゆえに今それをためらえば、疲労劣化した日本を次の世代に残す羽目となるのは確実。これこそしっかり議論すべきことなのだが。