傀儡がえし

2016年09月17日 09時50分

 ▼長編時代漫画『カムイ伝』で知られる白土三平の作品に、「傀儡(くぐつ)がえし」がある。「傀儡」とは操り人形のことで、人の心を自在に操って戦いを有利に進めるのが「傀儡の術」だ。甲賀の美女丸は任務遂行のため村の娘を「傀儡」に仕立てた後、術の本質についてこうつぶやいていた。「人を自分のつかいよいように作りかえるのさ」。物語では敵対する術者との息詰まるだまし合いが描かれる。

 ▼忍術といえば日本のお家芸だと思っていたら中国も負けてはいなかったようだ。国を挙げて他国に「傀儡の術」をかけていたらしい。時事通信が先日、伝えていた。聞くと中国政府と深い関わりを持つ中国企業が、オーストラリアの複数の政治家に多額の献金をしている実態が明らかになったのだとか。政策決定に中国の意向が反映されかねない、と憂慮する声が出ているそうだ。経費を肩代わりしてもらい、南シナ海問題で中国寄りの発言をする議員まで現れたというからあきれる。

 ▼なぜそんなことがといぶかる人もいよう。日本はもちろん米国、フランス、英国など民主主義国には外国人からの政治献金を禁止する法律がある。ところがオーストラリアにはそれがないそうだ。そこに中国が目を付けたらしい。それにしても金で他国の政治家に影響を与えるとは…。これまた時代劇だが、越後屋と悪代官のようではないか。白日の下にさらされれば、国際関係で最も大切な価値である信頼を失う。先の物語で甲賀の美女丸が身を滅ぼしたのも術への過信からだった。


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