スルガ銀行不正融資

2018年05月17日 07時00分

 人間の善悪の分かれ目はどこにあるのか。それに関して古代ギリシャの哲学者プラトンは大著『国家』で「ギュゲスの指輪」という民話を紹介している

 ▼ソクラテスが「人の根は善良」と教えると、ある弟子がこの話を示して反論したそうだ。善良な羊飼いギュゲスは偶然秘密の洞窟に入り、そこで自分の姿を消せる指輪を手に入れた。さあ、透明になったギュゲスは何をしたか。実は悪逆非道の限りを尽くしたのだ。経済学者スティーブン・D・レヴィットらの『ヤバい経済学』(東洋経済新報社)で学んだことである。他人から見えなくなることだけにとどまらない。人間は理由さえあれば悪い事にも容易に手を染めてしまう場合があるという

 ▼スルガ銀行(静岡県)の行員にとってそれは、成績やノルマだったようだ。シェアハウス投資向け融資に大量の不正が見つかった問題で、相当数の行員が顧客の通帳残高改ざんや契約書の偽造を黙認していたのである。この不正融資総額は2000億円に上るらしい。ノルマ未達は厳しく叱責され、昇進の道も断たれるため行員も必死だったのだとか。結果、シェアハウス運営会社や不動産販売会社が条件に合うよう書類を偽造していることに気付きながら融資を実行し続けた。営業幹部が審査に圧力をかけることさえあったという

 ▼幸いにも先の経済書は他人が見ていなくとも87%の人間は誘惑に負けず不正をしない事実も教えてくれる。とすると13%の人間が幅を利かすことになったスルガ銀行の経営には、指輪の悪用を許す欠陥があったと断ぜざるを得ない。


ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

e-kensinプラス入会のご案内
  • web企画
  • 川崎建設
  • オノデラ

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

おとなの養生訓 第245回 「乳糖不耐症」 原因を...
2023年01月11日 (1,640)
函館―青森間、車で2時間半 津軽海峡トンネル構想
2021年01月13日 (1,466)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (1,113)
おとなの養生訓 第170回「昼間のお酒」 酔いやす...
2019年10月25日 (983)
おとなの養生訓 第109回「うろ」 ホタテの〝肝臓...
2017年03月24日 (721)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第258回「体温上昇と発熱」。病気による発熱と熱中症のうつ熱の見分けは困難。医師の判断を仰ぎましょう。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第34回「1日2470個のご飯粒」。食品ロスについて考えてみましょう。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第32回「読解力と認知特性」。特性に合った方法で伝えれば、コミュニケーション環境が飛躍的に向上するかもしれません。