道産子が抱く大阪人の印象の一つに、「買い物で必ず値切る」があるのではないか。一人残らずそうだというつもりはないが、実際にそういった傾向はあるのだろう
▼聞いた話だが、大阪人は安く買えることはもちろん、駆け引きも楽しんでいるらしい。さすがに商いの街である。値切りには定石があるようで、まず大幅に低い値を提示し、次に小さな染みがあるなど商品に難癖をつけ、最後におまけを要求―だそう。売る側もそれを分かった上で、客と一緒に掛け合いを面白がっているのである。ここまでくると一つの文化と言って差し支えあるまい
▼ビジネス畑出身のこの人物の中にも、やはりそういった文化が脈打っていそうだ。トランプ米国大統領のことである。おととい、トランプ氏は医薬品大手との会合の席上、日本が何年も円安誘導を続けた結果、米国はドル高で損をしてきた、と日本の為替政策を批判したという。10日の日米首脳会談に向け、交渉を有利に運ぶため難癖をつけてきたように見える。思い出してみると、氏はまず米軍の駐留経費が安過ぎるからもっと日本は負担すべきと吹っ掛け、次に米国製自動車が売れないのは日本に障壁があるからだと主張した。やれやれこの調子だと法外なおまけを要求してくる日も遠からずだろう
▼自らディール(取引)が好きと公言しているところからすると、これがトランプ流のビジネス術というわけだ。同じ交渉でも、人情味あふれる大阪の掛け合いとは文化の中身が違う。お互いが笑って終われない取引では長続きもしないだろうに。