えー、毎度ばかばかしいお笑いを一席。八つぁんが浅草の観音様の前で行き倒れを見掛けた
▼「こいつは同じ長屋の熊に違いねえ」。急いで長屋に戻った八つぁんはそこにいた熊を見て、「おい熊、何のんびりしてる。おめえ観音様の前で死んでたぞ」。「え、俺がかい」と熊。「きのう悪酔いしておっ死んじまったんだよ」と八つぁんが教えると、熊も「そうか」。思い込みは恐ろしい。落語の「主観長屋」である。近頃は国会のことを長屋と呼んでもおかしくないのかもしれない。こちらにも声高に主観を振り回す人物がいて、大騒動を巻き起こしているのである。小学校開設のため大阪府豊中市の国有地を購入した学校法人森友学園の一件、と言えばお分かりだろう
▼近畿財務局が評価額を大幅に下回る価格で売却したのは、安倍首相が政治力を使って便宜を図ったからに違いない、と民進党が追及しているのだが…。いささか思い込みが強すぎるのではないか。一国の首相が個別の土地取引に口を出すなど。確かに筋の悪い話ではある。廃棄物が大量に埋まっていたとはいえ財務局の割引額は破格だし、購入した学校法人の教育方針は前時代的だ。しかも首相夫人の昭恵氏が名誉校長に予定されていたというのだから、民進党としてはカモがネギしょってきたようなものだろう
▼ただこれ、土地取引の適法性を調べれば済む問題である。国会の大切な審議時間を費やすこともなかろう。八つぁんがいくら主張しても、首相が熊のように「ああこの行き倒れは俺だ」なんて言うオチはありそうもない。