何もなかった?

2017年03月18日 09時40分

 サラリーマンの悲哀を描かせたら右に並ぶ者のない青木雨彦のエッセイに、こんな一節があったのを覚えている。昔読んだ話のため正確ではないが、単純な内容だから筋は違っていないはずである

 ▼夫の不倫がついに妻にばれてしまった。怒った妻は大変なけんまくで夫を問い詰める。一体いつから、相手の女とはどこで会ってたの―。夫は防戦一方。こう言うのが精いっぱいだ。本当に何もなかった、信じてくれ―。そんな小さな問題と一緒にするなとお叱りを受けそうだが、ちゃかしたくもなろう。あまりにお粗末ではないか。南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣された陸上自衛隊の日報が、奇術さながらに消失したり現れたりする一件である

 ▼防衛省は当初、廃棄したのでもう存在しないと言っていた。相手が信じてくれることを期待して、「なかったんだよ」と苦しい言い訳をしてみたわけだ。ところが国会で追及され再調査してみると、統合幕僚監部にも陸自にもデータが残っていたのである。見つかった時点ですぐ公表していれば傷も浅くて済んだ。ところがずるずる引きずっているうち、1月下旬に統幕の防衛官僚から公表するなとの指示が出たらしい。今さらあったとは言えない、なかったことにしようというわけだ。その官僚にとって防衛すべきは自分と省だったに違いない

 ▼浮気と防衛省の虚偽対応、騒動に大小はあれど、共通するのは一度地に落ちた信頼はなかなか回復しないことだ。国民に三くだり半を突き付けられる前に、防衛省は徹底して身をきれいにした方がいい。


ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

e-kensinプラス入会のご案内
  • 古垣建設
  • web企画
  • 日本仮設

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

おとなの養生訓 第245回 「乳糖不耐症」 原因を...
2023年01月11日 (1,648)
函館―青森間、車で2時間半 津軽海峡トンネル構想
2021年01月13日 (1,491)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (1,121)
おとなの養生訓 第170回「昼間のお酒」 酔いやす...
2019年10月25日 (975)
おとなの養生訓 第109回「うろ」 ホタテの〝肝臓...
2017年03月24日 (715)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第258回「体温上昇と発熱」。病気による発熱と熱中症のうつ熱の見分けは困難。医師の判断を仰ぎましょう。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第34回「1日2470個のご飯粒」。食品ロスについて考えてみましょう。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第32回「読解力と認知特性」。特性に合った方法で伝えれば、コミュニケーション環境が飛躍的に向上するかもしれません。