落語の「化け物つかい」をご存じだろうか。ご隠居さんが主人公なのだがとにかく人使いが荒いため、何度奉公人を雇っても1日で辞めてしまう
▼そのご隠居さん、化け物屋敷とうわさの家に引っ越した途端にまた奉公人に逃げられた。不便になると思っていたところに現れたのが一つ目小僧。これ幸いと次々に雑事を言いつける。女の幽霊が出ると繕い物、大入道には力仕事をあてがう。化け物たちは休む間もない。ある夜、大きなタヌキが涙ぐんで進み出た。全てこいつが化けていたらしい。聞くと暇をもらいたいとのこと。ご隠居が問いただすと、「こう化け物つかいが荒くっちゃあ、とても辛抱ができません」。落語はここで終わるが奉公人がいなくなったご隠居さんは困ったろう
▼今の日本でも、働き手が集まらなければ苦労するのは同じである。帝国データバンクが9日、2018年上半期の人手不足倒産が3年連続して前年同期比を上回ったと発表した。負債1億円未満の倒産は2倍に増えたという。仕事はあっても従業員がいないのでは話にならない。業種別ではサービス19件、建設18件、運輸・通信12件がワースト3。ここ5年半の件数を累計してさらに細かく見ると道路貨物運送、老人福祉、木造建築工事の順に倒産が多い
▼経営者もご隠居さんのように偏屈でこき使っているわけではなかろうが、それらの業種がやたらと忙しいのは事実である。昨今の売り手市場の中ではいかにも分が悪い。政府が旗を振る働き方改革も中小零細には簡単でないはず。さて、あなたの会社はどうだろうか。