未来投資戦略

2017年06月13日 10時13分

 自信を持って始めた事なのに周囲からは理解も協力も得られず、にっちもさっちもいかなくなる。そんな経験の一度や二度、誰にでもあるのでないか

 ▼当方はそんなとき、二宮尊徳のこんな言葉を思い出す。「尊い大道も、文字にして書物にしただけでは、世の中を潤すことなく、役立つことはない」(『二宮翁夜話』PHP研究所)。書物は氷のようなもの。そのままで水のように役立つわけがないとの教えである。書物も事業計画も同じだろう。翁は続けてこう説く。凍った書物は「胸中の温気によって、その内容をよく溶かして」元の水に戻して使いなさい。つまり、ありがたい言葉の羅列で満足するのでなく、日々実践するための具体策を考えることが大事というのである

 ▼さてその点、こちらは翁のお眼鏡にかなうものになっているかどうか。政府が先週、新たな成長戦略「未来投資戦略2017」を閣議決定した。タイトルは「Society5.0の実現に向けた改革」。最初から手ごわい氷である。この「5.0」、あらゆる産業や社会生活にIoTやAI、ロボットといった革新技術を取り入れ、さまざまな課題を解決するらしい。実にありがたい話ではある

 ▼ただ、政府や官僚は氷を作るのは得意だが、溶かして使いやすい水にすることは苦手である。それも踏まえてか、新戦略には失敗を恐れず挑戦できる仕組みもあるそうだ。アベノミクス第3の矢となる新戦略である。未来の日本の隅々にまで行き渡る豊かな水になるのか、凍った書物のまま終わるのか、政府の胸中の温気やいかに。


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