九州北部豪雨から1週間

2017年07月13日 09時15分

 歌人窪田空穂が1923年の関東大震災に際してこんな歌を詠んでいた。「東京に地平線を見ぬここにして思ひかけねば見つつ驚く」。それまでは建物が立ち並び見通しが利かなかったのに、全て倒壊して何もなくなってしまうと、思いがけず地平線が見えたというのである

 ▼見慣れた風景を突然失う。災害は違えど九州北部豪雨に襲われた人も同じ経験をしたのでないか。記録的大雨を観測してから1週間が過ぎた。ところが激しい雨と土砂崩れ、大量の流木のため自衛隊や警察、消防などの必死の救助活動は難航。事態は長期化の様相を呈している。福岡県内には依然連絡の取れない人が20人以上いるほか、大分県日田市では数カ所の集落合わせてまだ多くの人が孤立しているそうだ。亡くなった人も両県で27人を超える

 ▼帰る場所も大切な畑も失い、身の安全もままならない。住民の皆さんの心痛はいかばかりか。しかもようやく大雨が終わったかと思えば、30度を超える厳しい暑さが追い打ちをかけている。今回は植林されたスギの保水力や山の適正な管理、きめ細かな内水氾濫対策の遅れといった人為的な問題も指摘された。ただ、5日の朝倉市のように24時間雨量が516㍉にも達するのでは…

 ▼心配なのはこのところ毎年、日本のどこかで想像を超える大雨が降るようになったことである。もはや災害というより攻撃と捉えるべきなのかもしれない。安倍首相はきのう、現地を視察した。テロとの戦いに向け法整備を終えたばかりだが、災害との戦いも新たな段階に入っているのではないか。


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