職人技をAIに

2018年09月04日 07時00分

 主に二輪車と四輪車の部品を研究開発、販売しているヨシムラジャパンの創業者吉村秀雄氏は、その人並み外れたマシンチューニング技術の高さから「ゴッドハンド」を持つといわれていた

 ▼微妙な音や挙動の変化、それぞれの部品に触れた感覚などでマシンの状態を正確につかみ、常に最適な調整を施すことができたという。中でも国内最大級の二輪競技、鈴鹿8時間耐久ロードレースでは多くの伝説を残している。斬新な発想と工夫で、馬力を向上させる集合管マフラーを生み出したのも吉村氏だった。日本が誇る名職人の一人だろう。『徒然草』の一節にこうある。「万に、その道を知れる者は、やんごとなきものなり」。道を究めた人は尊い。わが国は昔から職人を敬ってきた

 ▼総務省が来年度からそうした職人の技をAI(人工知能)で継承していく取り組みを始めるそうだ。高齢化社会で卓越した技を持つ職人が、後継者にその技を伝承できないまま消えていく現状を打開するための苦肉の策だという。職人の技をAIでどうにかできるのか。疑問も感じるがこんな手法で進めるらしい。職人の体に機器を取り付けたり動作を映像で記録したりして作業工程をつぶさに把握。データ化して再現可能なように教材として仕立て直す

 ▼五感全てを使う吉村氏のような職人技をいかに体系化するかが課題となろう。『徒然草』からもう一節。「少しのことにも、先達はあらまほしき事なり」。ごく簡単なことでさえ、分かる人がいないと万事休すである。AIの先達でもいないよりはましなのかもしれない。


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