十勝総合局は19日、北海道胆振東部地震に関する管内被害状況の緊急実態調査(暫定版)を公表した。三井真局長ら同局の職員が産業団体や医療機関などへのヒアリングを実施してまとめたもの。多くの団体から停電復旧のタイミングが分からず、対応に苦労したという声が上がった。
今回の地震で十勝管内では停電により生活や産業に甚大な影響が出た。同局は地震から間もなく、被災の記憶が鮮明なうちに関係者らと積極的に意見交換し、今回の被害状況や課題点を調査した。
酪農関係では停電の影響で搾乳、生乳冷却などの作業が困難となり、牛の健康状態にも支障が出た。一部の乳業会社は工場が稼働できず、受け入れできなくなった大量の生乳は廃棄された。関係者は災害時の安定した電力供給に向けバイオガスプラント増設などインフラ整備の必要性を訴えた。
医療機関では、電話が不通となり連絡と情報収集の手段に課題があると指摘。特に電力の復旧時期が分からず、患者の人工呼吸器を古い非常用電源だけで動かし続けることへの不安が意見として上がった。
介護施設では電話が使えず利用者の安否は職員が自宅を回って確認。意見として固定電話では情報共有や収集ができなかったため、携帯電話など停電時でもつながる確実な連絡体制の構築が必要という声があった。
スーパーなどの小売店はレジを動かせなかったが、社会貢献としてパンや水の店頭販売を実施。卸売市場は地震時まで入荷があったものの、輸送業者の燃料不足や小売店の営業中止で場内に商品がとどまっていた。物流の維持と商品の保管に問題があったと指摘し、有事の際の高速道路無料化を求める声が上がった。
燃料業界では管内に大きい備蓄施設がなく、備蓄のある釧路から信号の消えた道を往復6時間かけて輸送。調査では十勝港を有する広尾町に備蓄タンクを造るべきではという意見も出た。
物流では停電で信号が機能せず、燃料も停電で供給できないため配送中止を決めた業者が多かった。また農作物の収穫期を控えて今後の輸送量が十分に確保できない懸念を示した。
避難所運営では大きな支障がなかったものの、長時間の停電の際に在宅医療を受ける住民へのケアが課題とされた。
三井局長は「調査結果を一つのきっかけに、十勝の命と暮らしを守り抜く体制や備えが充実発展していくことを期待する」と話している。